原発ができるという自覚
「実行する会」の結成
― 素朴な疑問ですか
ひとつは選挙戦時、佐藤町長は町民から原発について聞かれると「私という人間を信頼してくれ」と争点を曖昧にしていたこと。それが選挙が終わって、テレビのニュースのインタビューに答えているのを見て驚きました。「私は原発政策でもって信任を得たんだ」というような発言をしているんです。また原発慎重の村松さん、原発反対の相坂さんの票を合わせると、佐藤町長の票数を超えるんですね。そう考えると佐藤町長のこれまでの仕事など総合的に判断されて、当選したかもしれませんが、原発の是非については町民はそう考えていないのではないかと思ったんです。
― 買い残した土地も裁判で町のものとなり、いよいよ町長や議会の判断で東北電力へ売り渡すことも可能に
そういった状況に危機感を抱いた仲間が集まって結成したのが「巻原発・住民投票を実行する会」(以下、「実行する会」)です。9月のある日、酒屋を経営する田畑護人さんのところに私を含めた数名が集まって話し合い、10月に正式に会を発足させました。
― 笹口さんはそれまで原発に関する運動はやっていたのでしょうか。「実行する会」の代表に就任していますが
それまではまったくやっていませんでした。代表になったのはほんとにたまたまです(笑)。集まった仲間たちは皆わたしより年長であったり、お客様と直接関わるような商売をされている人たちでした。あと「私は体調悪いし」という人もいて、話し合いの中で「笹口、お前やってくれ」と。
― たまたま(笑)。「実行する会」の目的は
その時点で、原発の問題に関して町民は25年もの長い間、なんらかの形で考えてきてたんですね。原発に反対する団体もありましたが、推進の団体もありました。推進派は、区長さんや建設会社など、町のいろいろな組織に関わるようにもなっていました。推進派の団体は、定期的に原発についての理解、啓発のためのツアーも開催していました。女川や柏崎などの原発を見学、近くの観光地を観て、豪華なホテルに泊まって飲み食い、それにしては会費もずいぶん安かったようです。建設会社であれば、原発が来れば仕事が増えます。商工会では例えば受注組合を作って、仕事を取ることができるかもしれないし。他にも直接、仕事の利害関係がなくとも、お店のお客さまがその利害関係かもしれません。それが自分の意思とは違う場合、非常に難しい立場になります。
― 原発ができるというのは、あらゆる職種に影響を与えるんですね
また自分の家族や親戚とかがそういった会社に勤めているということもありますし、とにかく原発のことについて発言しないのが、大人の対応というか、そういった状況でもありました。あまり大きい声で反対運動をすると今度は何かレッテルを貼られたり。町の中で賛成や反対といったことが自由に言えなかったんです。
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